2023.01.12 [thu]
イタリアの年末年始
明けましておめでとうございます。年末年始はどうお過ごしになりましたか?
キリスト教が深く根付いたイタリアでは、クリスマスが一年で最も盛大に祝われ、家族が一同に集まるとても大事な行事です。
この記事では、イタリアのクリスマスとお正月の過ごし方を筆者の体験談とともにご紹介いたします。
INDEX : クリックで移動
1. 11月:ナターレへの準備
◉ プレゼピオ
◉ クリスマスマーケット
◉ イルミネーションやツリー
6. 12月26日:続く祝日
9. 終わりに
11月下旬:ナターレへの準備
イタリア人にとって1年の中で最も重要な日である、クリスマス。
イタリア語では〈ナターレ / Natale〉といい、ラテン語で「生まれる」ことを意味する natalis, nasci が語源です。
そんなクリスマスへ向けた準備は、11月下旬から始まります。
少しずつ街が赤色になっていき、とってもワクワクする期間です。近年ではアメリカからきたブラックフライデーの影響もあり、一足先にクリスマスの準備が開始されます。
そして12月1日を迎えると、クリスマスの雰囲気は加速します。どこの国でも同じですね!
街中にイルミネーションも灯り始めます。
今年はエネルギー料金の値上がりのため節電されると予想していましたが、しっかり点灯していました。
イタリア人のクリスマスにかける思いが伝わってきます。
12月8日:ナターレが始まる祝日
イタリアのクリスマスは、12月8日の「無原罪のお宿りの日(Immacolata Concezione)」という祝日から始まります。
この日は、聖マリアの母である聖アンナが、神の意志でマリアを懐妊したと大天使ガブリエルが伝えた日。
この祝日を「聖マリアがイエスを宿した日」と勘違いしているイタリア人も多いようですが、何百年と論争があったのち、教皇ピウス9世によって1854年に正式に信仰箇条と宣言されており、現在ではカトリック教会における教義となっています。
イタリアでは、この日を境にさらにクリスマスムードが盛り上がります。街中のデコレーションがこの日から行われることが多いためです。ちなみに家庭のクリスマスツリーも、この日に飾られることが多いようです。
イタリアのクリスマスには何が欠かせないのでしょうか?欠かすことのできない3つのデコレーションを紹介いたします。
1 . プレゼピオ
日本人にはあまり馴染みがありませんが、イタリアのクリスマスには欠かせない、キリストの降誕物語を模したジオラマです。
聖母マリアや天使、動物などがキリストを見守るミニチュア・フィギュアのセットのようなもの。
12月8日に街中や教会、自宅にも置かれる、イタリアのクリスマスの伝統のひとつです。
日本で雛人形や兜を代々受け継ぐように、家族や教会で受け継がれているものもあれば、人形がバラ売りされているもの、自分で苔や石から集めて作る人など、個性がたっぷりで見ているのが面白いんです。
2 . クリスマスマーケット
クリスマスマーケットといえばドイツやチェコが有名ですが、イタリアでもマーケットに出会うことができます。
木造の小屋が並び、イルミネーションとクリスマスツリーでとても良い雰囲気。
プロジェクションマッピングやコンサートを行う街も増え、さらなる盛り上がりを見せています。
マーケットの定番は、郷土料理やホットワインなどのテイクアウト、チーズやサラミ、クリスマスグッズ、防寒グッズなどです。ホットワインを片手に散歩するだけでも、とても楽しいです。
3 . イルミネーションやツリー
冬は17時には暗くなってしまうイタリアですが、イルミネーションが街に映えます。
ロンバルディアでは毎年、ミラノの大聖堂とヴィットリオ・エマヌエレII世のガッレリアに立てられる巨大なツリーが見どころです。
今年のドゥオモ広場のツリーは、もみの木にピンクの装飾のレディーライクなツリーでした。
MILANO TODAYによると、このツリーはインフルエンサー、クリスティーナ・フォガッツィ氏が展開するスキンケアブランド、VeraLabがスポンサーし、70万ユーロ(日本円でなんと約1億円!!!)かかったそうです…!
“We wish you to be yourself(あなたがそのままの自分でいられますように。)”
というメッセージが添えられたツリーでした。
またそばのガッレリアでは、スワロフスキーによるおとぎ話のようなツリーが飾られました。
高さ12メートルにも及ぶ大きなツリーの根元には、ドゥオモ大聖堂のオーナメントも飾られていました。
ツリーは1万個のライトと200個の装飾で彩られ、キラキラと輝くツリーがガッレリアとマッチし、とても素敵でした。
12月中旬:大忙しなナターレ直前
8日を過ぎると、街が最も活気付く2週間となります。
プレゼントや服、食品を買いに走りまわる人たちや、いつ仕事納めをしようか、いつ帰省をしようかと話に花が咲く人たちで溢れます。また日本の忘年会のように同僚や友人たちと外食が続き、プレゼント交換をし合います。
みんなどこか浮き足立っていて、賑やかな2週間。もしかしたら一番ワクワクする時期かもしれませんね!
その反面、役所や郵便局、スーパーなども閉店に向かうため、手続きや買いだめで様々な場所が混雑します。
さらに、イタリア人の多くが故郷に帰省するので、公共交通機関は満席、道路は大渋滞が発生します。12月20日前後には仕事納めをする人も多く、そのあたりの人々の移動に巻き込まれると大変です。
12月22日に掲示された sky tg24 によると、今年は24日・25日が土日にあたる暦だったため、「23日(金)の午後が最も混雑し、24日(土)のディナー前、そして26日(月)はリターンラッシュが予測され、クリスマス時期に移動する総数は1700万人を見込んでいる」とのことでした
そして教会では、聖歌隊や音楽団のコンサートが数多く開催される時期でもあります。ミサはちょっと…という方も気軽に足を運べるようなイベントが多く、夜の教会に入れる貴重な機会です。
忙しすぎるクリスマス直前の2週間ですが、街も人もワクワクしていて、いよいよクリスマス目前!
12月24日:ナターレ前日
昼過ぎから続々と人が集まる故郷。親戚が集まって久しぶりの再会を楽しみます。
家族のつながりを大事にするイタリアでは、家系の最年長者が住む故郷に一同が会することも珍しくなく、24日に母方の親戚、25日に父方の親戚などと秋から調整を繰り返し、家族全員集合!をする人たちもたくさんいます。
また参加する全員にプレゼントを渡すのも、イタリアの文化の一つです。
プレゼントはクリスマス用にラッピングし、宛名を書きます。持ってこられたプレゼントは全てクリスマスツリーの下に置かれ、ツリーが見えなくなるほどになります。サンタクロースを信じている子供がいる家族は、大人たちが入念に打ち合わせをし、サンタさんがプレゼントを持ってきてくれたように演出するのも、世界共通でしょうか?
お酒やおつまみを食べながら、夕食までワイワイ過ごします。叔父や叔母、従兄弟などとは1年ぶりの再会になることもあったり、新しい家族が増えたりして、話すことが尽きません。また外食ではなく家で食事をすることが一般的なようです。
18時頃から席につきはじめ、前菜とプロセッコでディナー開始。「乾杯!」
24日の夕食には魚料理が振る舞われるのもイタリアのクリスマス(※地域差あり)。キリスト降誕の前に体を清める意味があるそうです。
前菜にはサーモンやタコ、エビなど、メイン料理にはロブスターやマグロ、アンチョビなど工夫を凝らした魚料理が振る舞われます。それに合わせて振る舞われるのは、白ワイン。地元のワインや手土産のワインなどを食事と味わいながら楽しみます。
お腹が膨れた頃に、みんな気になり始めるプレゼント。開封するのは24日の食後、夜中、25日の朝と、家族や地域によって異なるようです。
筆者のパートナーのトスカーナの家族は、24日の食後、サンタクロースが家にやってきます。大人の連携プレーで家のドアがノックされ、「なんだろう?ああ!プレゼントが届いたよ!」と子供たちをツリーへ誘導。そこには大量のプレゼントが!!宛名ごとにプレゼントを仕分けて、次々に開封していきます。みんなが笑顔になる瞬間です。私が初めて参加した時、子供たちがもらうプレゼントの数が衝撃的だったことが、今でも忘れられません。
教会では、イエスキリスト誕生のミサが行われます。
今年もローマ・バチカンのサン・ピエトロ寺院では19時半より降誕祭が執り行われ、教皇フランシスコが「寄り添い」「貧しさ」「具体性」という3つのメッセージを世界に向けてお話しになりました。
12月25日:ナターレ当日
\ BUON NATALE !/
クリスマスのメインは、25日の盛大な昼食です。前日の魚料理の消化を待たずに、ランチが始まります。
25日は多くの家庭がお肉料理をいただきます。
前日と同じように、プロセッコと前菜からスタート。ブルスケッタなどの前菜から始まり、ラザニアやラグーなどのパスタ料理、チキンやステーキなどの肉料理、それに合わせた野菜のグリルなどの付け合わせ、と一品ずつ出てきます。もちろんワインは赤。
2日間を通して、文字通り「ずっと食べている」クリスマス。特にマンマ(母)やノンナ(祖母)をはじめとする女性たちがみんなで作る料理はとっても美味しい上に量が物凄く、「まだまだ食べなさい!」と食べさせられ続けるので、天国のような地獄のような(?)幸せな2日間が続きます。
食事の後、デザート→食後酒→コーヒーまでで、イタリアの「食事」が終わります。デザートは別腹、というのも世界共通ですが、イタリア人の甘いもの好きには毎度驚かされます。
クリスマスに食べられるデザートとして有名なものは、2つ。
ひとつ目は、パネットーネ。ミラノ発祥の、ブリオッシュ生地にドライフルーツが入ったドーム型の菓子パンです。1920年頃、パティシエのアンジェロ・モッタ氏が考案し、瞬く間にイタリア全土に広まりました。
フルーツの砂糖漬けが入ったものがクラシックですが、最近ではヌテラやピスタチオクリームなど、バリエーションが豊富です。食品業界とのコラボで人気再熱のドルチェ&ガッバーナも、パネットーネを販売も行いました。D&Gらしいカラフルな缶は、インテリアとして使えてとても可愛いですね!
ふたつ目は、黄金のパンこと、パンドーロです。こちらはヴェローナ発祥の、卵とバターがたっぷり入った星型のスポンジケーキ。ドライフルーツなどは入っておらず、粉砂糖をふりかけて食べます。カステラに似た食感で、バニラ風味がとても美味しいです。
どちらも12月初旬から店頭に積み上げられ、クリスマス前後に食後のデザートや朝食に食べられます。スーパーで手に入る安いものから、一流シェフが監修した高級なものまであるので、毎年選ぶのが楽しみです。
デザートと一緒に、アマーロやグラッパなどの食後酒を飲みながら、家族との団欒を楽しむのがお決まりです。その後エスプレッソコーヒーを飲んで、ランチはおしまいになります。
午後はカードゲームをしたり、テレビを見たり、ゆったり過ごします。消化のために散歩に出かける人も多く、暖かかった今年のクリスマスはとても過ごしやすい日になりました。のんびり家族と過ごす何気ない時間が、とても良いリラックスになりますね。
12月26日:続く祝日
イタリアのクリスマスは、まだ終わっていません!
翌日の26日は、聖ステファノの祝日、お祭りは続きます。最初の殉教者である聖ステファノを記念した祝日で、学校や会社は連休です。
24日から食べ続けているイタリア人たちは、残り物やパネットーネ・パンドーロを食べながら家族と過ごし、気分はクリスマスから年末へと向かっていきます。
ちなみに、12月24日から26日までは店が閉店していることが多いので、注意が必要です。
12月31日から1月1日:大晦日とお正月
クリスマスが終わると、ある程度落ち着きを取り戻します。
早くは1月2日から仕事始めの人もいるため、クリスマス後も実家や地元に残る人もいれば、自宅に帰ってきてゆっくりする人もいます。
日本の大晦日・お正月とは正反対で、飲んだり騒いだり(また!)するのが欧米らしい年越しです。街のクラブやパブなどに出かけ年越しパーティーをしたり、家に友人を呼んで飲みながら年を越したりします。
0時を迎えると至る所で花火や爆竹が鳴り、とても騒がしくなります。自宅から見ているだけなら綺麗なのですが、毎年自作の花火や不注意で負傷する人が出るのは、新年からとても残念です…。
1月6日:エピファニア(公現祭)の祝日
仕事始めを迎える大人が多い中、子供たちにはまだ楽しみが残っています。
それは、エピファニアの祝日です。イタリアでは「ベファーナ」という愛称で親しまれています。
エピファニアとは、日本語では公現祭と呼ばれ、東方の三博士がベツレヘムでキリストにお祝いを伝えた日です。
ではなぜ、べファーナとも呼ばれているのでしょうか?実はこんなお話が言い伝えられています。
『東方の三博士は、旅路で立ち寄った村で出会った女性に、「イエス様の誕生を一緒に祝いに行こう」と誘いますが、女性は忙しいと断ってしまいます。後になり断ったことを後悔した女性は三博士を追いかけますが、とうとうイエス様にお目にかかることができませんでした。この女性はキリストへの贈り物を持って今でも彷徨っています…。』
その時、お祝いのために焼き菓子を持っていたことから、この女性、ベファーナと呼ばれる魔女がお菓子を持ってくるという言い伝えになり、風習化しました。なので1月6日は、良い子にはお菓子が、悪い子には炭が枕元の靴下に置かれる日なのです。
イタリアの子供、どれだけ贈り物もらえるの!?と毎年驚愕していますが、これをもってクリスマスシーズンが終わりを告げます。この日にクリスマスの片付けが行われ、段々と日常に戻っていくのです。
終わりに
イタリアのクリスマスからお正月の約1ヶ月間を順に追ってみました。いかがでしたか?
イタリアには多彩な食文化があるように、地域や家族によってクリスマスの伝統な過ごし方も様々です。旅行先や居住先で、みなさまだけの素敵な暮らしをぜひ見つけていただきたいと思います。
〈参考サイト〉
バチカン市国ホームページ、バチカン・ニュース:https://www.vaticannews.va/ja.html
EATALY :“イタリアのクリスマス:食事と伝統“, EATALYより