2022.01.29 [sat]

イタリアのモノ作り

モノ作り産業が集まる「第三のイタリア」

イタリアはかつてヴェネチアやミラノ、ジェノヴァなど北部の都市国家群やサルディーニャ王国、中部のローマ教皇領、南部のナポリ王国がそれぞれ分立し、力を持っていました。

そうした歴史的背景を踏まえてイタリアの地域を産業別に見ると、かつてオーストリア帝国が支配しその影響が残っている北西部地方には、自動車・機械工業の大企業群が多く存在しています。いわゆる「第一のイタリア」と呼ばれている工業地帯です。

一方ナポリ王国が長らく独自に統治していた南部は、「第二のイタリア」と呼ばれ、温暖な地中海性気候を生かした農業や観光から成っており、イタリアの自給的な経済を支える重要な農業地帯になります。

そして、都市国家やローマ教皇領がその前身となった、北東部から中部にかけて広がる一帯が「第三のイタリア」と呼ばれるモノ作り産業地帯です。

この「第三のイタリア」では、繊維製品・革製品・眼鏡・家具類・木工製品などの、伝統的なモノ作り産業を担う都市が集まっています。ローマ・ヴェネツィア・ボローニャ・フィレンツェなどがその代表格と言えるでしょう。また、グッチ・フェラガモ・ランボルギーニ・マセラティなどの世界的に有名な高級ブランドも、この中に位置しています。

都市単位で製品やブランドを持つ

そして実はイタリアでは、都市ごとに所属するような形で産業や製品を持っています。日本では家電製品はパナソニックや東芝、炊飯器なら象印やタイガー、エアコンならダイキンや三菱電気というように、産業や製品は企業に属しています。

しかしイタリアでは、木製家具ならブリアンツァ、自動車ならモデナ、靴ならベラージオ、というように、都市ごとに強みとなる産業や製品を保持し、都市の名前がブランド銘柄化しているのが特徴です。

さらに、それぞれの都市の産業はニッチ市場のために品質が相対的に高く、世界的に高い地位を維持できており、どの町や村も世界市場でおよそ1500億円規模のシェアを誇っています。しかもそうした都市、町や村がおよそ1500もイタリアにはあるのです。

日本でも金属製洋食器で有名な新潟県の燕市や、メガネで知られる福井県鯖江市などがイタリアのモノ作り都市モデルと近い立ち位置にありますが、これらの都市がイタリアと違う点は、独自ブランドで売らずに、他社ブランド品を製造する下請企業でしかないということです。

さらに驚くべき点は、イタリアではブルガリ・グッチ・フェラガモなどの高級ブランド品で有名ですが、それらのブランド品のうち、この都市では例えばグッチのバッグの金具だけを作る、この都市ではフェラガモの靴紐だけを作るというようにして、細分化をして分業体制を築いていることです。

100円ショップやスーパーに売っているような安価な商品ではなくて高級ブランド品ですから、高級家電製品や自動車のような価格で売れたりすることもあります。そのため、たとえ小さな一部の部品だけを都市全体で作っていたとしても、人々の雇用を支え生活を維持することが出来るのです。

中小零細企業が主役

またイタリアでは、従業員が15人を超えると税金が上がる為、その結果節税のために15人未満の中小零細企業がとても多くなっており、中小零細企業が大変多く、企業全体のなんと約95%を占めています。こうしたものづくり都市でも大企業ではなくて中小零細企業が基礎単位となって製品を製造しています。

さらに、個々では細分化されていて力を持たない中小零細企業の集まりでも、イタリアにはボローニャ・パルマ・モデナなどに代表される都市では独特の「コーディネーター企業」というものがあります。

コーディネーター企業が中小零細企業の一群を束ねる司令塔、大企業の本社機能の役割を果たすことで、中小零細企業が有機的な結合を果たし、擬似的な大企業のようにして海外へ向けて販売することも可能となっています。

この記事の著者

Yoko Shimi

イタリアデザインのスタッフです。

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