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ITALIA DESIGN BLOG
2022.08.31 [wed]
「イタリア映画」と聞いて、皆さんはどんな作品を思い浮かべますか?
『自転車泥棒』に『甘い生活』、『ひまわり』や『ベニスに死す』でしょうか?
それとも『ニューシネマ・パラダイス』に『ライフ・イズ・ビューティフル』…?
いやいや、それだけではありません!
最近のイタリア映画も良作がたくさんあります。
今回はイタリア好きの筆者が、本当におすすめしたい作品をご紹介いたします。
この記事の目次:クリックで移動
皆さんは普段、どのような映画を観ますか?
日本で海外映画と言うと、やはりハリウッド映画や韓国映画のタイトルをよく耳にしますが、イタリア映画も負けていませんよ。
知る人ぞ知る、魅力的な作品がたくさんあります。
筆者は昔から興味があったので、レンタルショップでイタリア映画を自然と手に取るようになりました。
残念ながら日本の映画館での上映は限られていますが、最近では動画配信サービスや、オンライン上映などで最新の作品を鑑賞することができます。
今まで作品を観てきて個人的に感じているのは、イタリア映画の特徴や良さは、「人間を描くことが上手」ということです。
これは邦画と共通することかもしれませんが、イタリアの作品は登場人物の心理・感情を丁寧に描いています。
したがって、ドラマやミステリー、サスペンスなど、人間模様・社会問題を描いたジャンルはイタリア映画の得意部門だと言えるでしょう。
さらに、舞台の演出を盛り上げる、音楽やインテリア・衣装なども、イタリアならではの洗練された美しさを感じることができます。
ここからは、筆者が実際に鑑賞した作品の中から5作品を紹介いたします。
この記事のためにすべての作品を再鑑賞しました!
ネタバレなしで、正直にレビューしていきます。
①『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーク』(2015年・アクション)
〈あらすじ〉
舞台はテロの脅威に怯えるローマ。
郊外に住むエンツォは、真っ当な職にも就かず、孤独に毎日を過ごしていました。
ところが、あることをきっかけに彼は超人的な力を手に入れます。
当初は私利私欲のためだけに力を使っていたエンツォ。
しかし、事件に巻き込まれてしまい、犯罪集団から友人の娘を救うことに。
友人の娘は、アニメ『鋼鉄ジーク』の大ファン。
エンツォの力を見た彼女は、作品の主人公「司馬宇(シバヒロシ)」に重ね合わせて彼を慕います。
そんな中、犯罪集団のリーダー、ジンガロがエンツォに目をつけるようになって…。
〈レビュー〉
本作は漫画家、永井豪氏が原作の『鋼鉄ジーグ』から着想を得て作られた「ダークヒーロー・エンタテイメント」です。
皆さんは、「ヒーロー」にどんなイメージを持っていますか?
この作品は、これまで私が持っていた「ヒーロー像」をいい意味で裏切ってくれました。
当初、筆者は主人公の生き方に共感ができずに、ストーリーが進んでいきました。
しかし彼は、徐々に人として他者と交わって生きていく豊かさを取り戻していきます。
そんな変化に嬉しくなると同時に、思いもよらぬ展開にハラハラし目が釘付けに。
エンツォ役クラウディオ・サンタマリアが、冴えないオジサンからヒーローになっていく主人公を繊細に演じています。
また多くのレビューでも絶賛されていますが、敵役のルカ・マリネッリが見事にサイコパスを演じています。
筆者は当初、タイトルから勝手に「B級映画なのでは…」と想像してしまっていたのですが、とんでもない!
ハリウッドとはまた一味違ったアクション映画でした。
日本のサブカルチャーも随所に感じられて、きっと楽しめること間違いなしです。
②『Viva!公務員』(2015年・コメディ)
〈あらすじ〉
「一生涯安泰」を求めて、めでたく公務員になったケッコ。
地位にあやかり、親に依存した生活を享受する彼に、突然危機が訪れます。
それは政府による「公務員の削減」。
彼は自主退職を申し出るか、異動するかを迫られます。
しかし、公務員を意地でも辞めたくないケッコは、迷いなく異動を選びます。
しかもあらゆる環境ですぐに順応し、悠々自適に暮らす始末。
そんな彼がついに飛ばされた先は…。
〈レビュー〉
「何があっても譲れないもの」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
主人公ケッコの場合は、「公務員」という地位でした。
「それがどうした⁈」と言いたくなりますが、他人にはどうでもいいようなことでも、「自分には大事」ということが、誰しもあるのではないでしょうか。
この作品は、極度の偏見とこだわりを持った男の人生を描いています。
まず、邦題のタイトルからもインパクト大ですよね(笑)。
当初は、主人公のあまりにも情けない姿に、観ているこちらも呆れてしまう状況でした。
しかし、人生は思わぬきっかけが前向きな変化をもたらします。
筆者は、予測できない彼の言動に終始驚かされつつ、彼の憎めない姿と、テンポの良いストーリーに知らぬ間に引き込まれていきました。
作中ではあえて、今ではタブーとされることも、偏った・誇張された文化や価値観も剥き出しで描かれていました。
しかしそのような人間の愚かさや浅はかな部分も含めて、なんとか幸せを求めて生きていく人の姿を、ユーモアと皮肉たっぷりに描いていると感じました。
思わず声を出して笑ってしまう場面がたくさんあり、鑑賞後は爽快な気分になりました。
③『盗まれたカラヴァッジョ』(2018年・ミステリー)
〈あらすじ〉
主人公は、映画製作会社の秘書であるヴァレリア。
彼女は人気作家アレッサンドロのゴーストライターでもありました。
ある日、元捜査官を名乗るラックという男性が、かつて自身が関わった事件をシナリオ化するよう彼女に勧めてきました。
それは1969年にシチリアの教会から盗まれた、カラヴァッジョの名画「キリスト降誕」の未解決事件についてのものでした。
ヴァレリアは、彼の話を基に記事を執筆し、表向きはアレッサンドロの名前で会社に発表しました。
すると、作品は瞬く間に高評価を受け、映画化まで決定することに。
そんな中、突然アレッサンドロが何者かに誘拐され暴行を受けた状態で発見され…。
〈レビュー〉
イタリアの画家、カラヴァッジョの名画『キリスト降誕』盗難事件は、1969年に実際にあった未解決事件です。
この作品はそれに着想を得て、非常に上手く脚色・演出がなされていました。
原題は『名もなき物語』。
まさにその通りに、先の読めないストーリーが次々に展開していきます。
そのため、筆者も「何が事実で何が虚構か」が分からなくなるような、トリックにはまったような感覚に陥りました。
またサスペンスではあるものの、ユーモアや美しさ、登場人物の人間味溢れる描写など、随所にイタリアンエッセンスが散りばめられています。
事件の進行とともに、主人公ヴァレリアが内外面ともに変化していく様子にも、ワクワクしますよ。
ひと時たりとも、画面から目を離せません。
④『グレート・ビューティー 追憶のローマ』(2013年・ドラマ)
〈あらすじ〉
主人公ジェップはベストセラー作家。
彼は20代の頃にたった一作で成功を収め、富と名声を得ました。
しかし65歳を過ぎてもなお、仲間とパーティで騒ぐ日々を過ごしていました。
それは、心のどこかで初恋の相手が忘れられないためでした。
ジェップは、彼女のような「大いなる美しさ」を追い求めて、大都会ローマを彷徨っていました。
そんな中、彼は彼女の訃報を知らされます。
自ずと人生の岐路に立たされたジェップは…。
〈レビュー〉
あなたは人生に何を求めますか?
この作品を見終わった後、私は何とも言えない無常感と同時に充実感を得ました。
厳かな雰囲気から始まる冒頭。
そこからガラッと一変し、セレブたちが踊り狂うパーティーシーンに移ります。
「一体何を観せられているのだろう」と、不安感を抱きながらもストーリーを追っていると、段々と作り手の意図が理解できるようになってきました。
かつての恋人との忘れられないひと時、彼女はジェップに何を言ったのか。
矛盾で溢れている世の中で、一体何が正しいのか。
真の「美しさ」とは何なのか。
この作品に登場する台詞や情景はとても詩的です。
それらが、自分の人生や様々な価値観について考えるヒントになります。
作品の鑑賞後、何を感じるかは人それぞれであって、同じ人でも観た時々で違うことでしょう。
私もまた数年歳を重ねた時に、改めて観てみたいと思える作品です。
⑤『シチリアーノ 裏切りの美学』(2019年・ミステリー)
〈あらすじ〉
1980年代、イタリアではマフィアの抗争が激化していました。
主人公トンマーゾ・ブシェッタは40代前半、シチリア発祥の犯罪組織「コーサ・ノストラ」の構成員でした。
彼は、難を逃れるべくブラジルに逃亡しますが、残された兄弟や家族は皆殺害されてしまいます。
さらに、素性が見つかったブシェッタはイタリアに引き渡されます。
そんな中、彼はマフィアの撲滅を目指すファルコーネ判事と出会い…。
〈レビュー〉
マフィア映画と言えば、日本でもゴッドファーザーが有名ですが、こちらは実話を基にした作品です。
ブシェッタの法廷での証言は、後にイタリア史上最大の「マフィア逮捕」に繋がりました。
作中では、実際にいた人物やその会話も、忠実に再現されています。
まるでドキュメンタリーを観ているような感覚で、大変見応えがありました。
幼い頃から、組織の中にいることが当たり前だったブシェッタ。
犯罪を擁護することはできませんが、しかし当人にとってはやむを得なかった環境下で、家族を守り生きていくことの意味を考えさせられました。
またこの作品は、「イタリア社会とマフィアがどう結びついて成り立ってきたのか」を垣間見ることができます。
私たちがイメージする「陽気なイタリア」ではなく、イタリアの影の部分を知ることができ、非常に興味深く感じました。
ブシェッタ役のピエルフランチェスコ・ファヴィーノの演技に注目です。
シブくてとても華がありました。
毎年8月末から開催される「ヴェネチア国際映画祭」は非常に有名ですが、日本国内でも毎年「イタリア映画祭」が開催されています。
このイベントは、朝日新聞社、イタリア文化会館、そしてローマにある映画撮影所「チネチッタ」が主催しています。
例年4月末から東京と大阪で、最新のイタリア映画作品をいち早く観ることができます。
また、近年では期間限定でオンライン上映も行われるようになりました。
公式サイトでは、過去に上映された作品やオンライン試写会の案内なども掲載されています。
ぜひチェックしてみてください。
イタリアのローマには、「チネチッタ」というヨーロッパ最大の撮影所があります。
チネチッタ(cinecittà) とは「映画都市」という意味で、チネマ(cinema:映画)+チッタ(città:街・都市)を合わせた言葉です。
大規模なセットや、多くのスタジオ・編集所を誇る場所で、イタリア映画をはじめ、テレビ番組やCM、他国のロケ地としても使用されています。
邦画では、阿部寛さんと上戸彩さんが出演した『テルマエ・ロマエ』の撮影も行われました。
また、一般公開されているエリアでは観光客向けのガイドツアーもあり、特に古代ローマのセットは圧巻で当時の様子がリアルに再現されています。
他にも展示・ワークショップなどから、イタリア映画の歴史や作品作りを学べるので、映画好きには必見の観光スポットです!
***
いかがでしたか?
映画や動画配信サービスで作品を観る機会が増えた今、イタリアの作品に触れてみるのはいかがでしょうか?
日本やハリウッドとは違った描写や感性に、きっと新たな発見があるはずです。
今回おすすめした作品はほんの一部なので、また第二弾をお届けしたいと思います。
お楽しみに!
〈参考サイト〉
・「イタリア映画祭」サイト ⇒ https://www.asahi.com/italia/2022/
・「チネチッタ」公式サイト ⇒ https://cinecitta.com/