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ITALIA DESIGN BLOG
2022.05.30 [mon]
日本ではまだまだマスク生活が続いている中、だんだんと規制が緩まってきているヨーロッパですが、先日5月21日、イタリアのラジオ局 Radio Italia が毎年開催する大規模なフリーライブが、2年ぶりにミラノのドゥオモ広場に復活!普段あまり耳にしないイタリアPOPSをご紹介します。
“Radio Italia Solo Musica Italiana (ラジオ イタリア、イタリアの音楽だけ)”
このフレーズが耳に残るこのラジオ局は、1982年のミラノでマリオ・ヴォランティ氏によって設立されました。マリオ氏は自身がミュージシャン、ラジオスピーカーだったことから、当時混沌としていた音楽界を一新するため、イタリア音楽専門のラジオ局としての挑戦を始めました。
この挑戦はラジオ市場に革命を起こし短期間で国民の支持を集めた結果、近年では「イタリアで最も聴かれているラジオランキング」で常に上位にランクインする大人気のラジオ局に成長しました。そして今年2022年は、その設立40周年を祝う記念すべき年でもあるのです。
正式名を“Radio Italia Live – Il Concerto(ラジオ イタリア ライブ ー コンサート)”というこの音楽祭の記念すべき第一回目は2012年、ラジオイタリア設立30周年を記念し開催されました。そして会場は常に、ミラノの心臓でもあるドゥオモ教会目の前の広場。
ドゥオモ広場は開催の1週間前から機材の搬入や設営が始まり、前日にはアーティストのリハーサルが行われる様子も見ることができるため、熱狂的なファンは早くからミラノ入りするそうです。約4時間にわたり開催された2022年のこのコンサートではおおよそ2万人の観客が集まり、計15組のアーティストが人気曲を3曲ずつ披露しました。
そしてこのライブは、なんと無料!ドゥオモ広場という野外で開催されるため、誰でも参加することが可能になっています。毎年ライブが行われる5月〜6月は気温が上がる日も多く、このコンサートを迎えると早くも夏のバイブスがミラノを包み始めます。
15組ものアーティストをタダで鑑賞できる!ということでミラノの街は人が溢れかえり、周辺の道路や地下鉄は閉鎖され、厳重な体制で行われていたそうです。またはイタリアではマスク着用の規制が緩くなり大人数が集まることもできるようになってきたので、ストリーミングで見ていた筆者も感じるほど、開放感にあふれた人々でいっそうライブが盛り上がったようでした。
2013年から毎年ライブを仕切るのは、イタリアで有名なコンビのひとつ、ルカ&パオロことルカ・ビッザーリとパオロ・ケッシソグルー。ルカとパオロはラジオパーソナリティーだけでなく、コメディやTVと幅広く活躍するイケオジコンビ。
そして音楽を統括するのは、指揮者であるブルーノ・サントリー。イタリア国内で行われる様々な音楽祭での指揮者を務めるほか、現在はイタリアン・フィルハーモニー・オーケストラでも指揮をとっています。
また2022年のライブはRadio Italia、Skyをはじめとする有名イタリアTV局で生配信されたほか、NOWやTV8といったチャンネルでストリーミング配信が行われ、会場だけでなくイタリア中が熱気に包まれました。
日本でもっとも身近なイタリアの音楽はなんでしょうか?ヴァイオリンやピアノで奏でるクラシックでしょうか?南イタリアの風景を想像させてくれるアコーディオンの音楽?それともビールのCMでご存じの人も多い「ヴォ〜ラ〜レ!」?
アメリカやイギリスのポップスと比べて馴染みのないイタリア音楽かもしれませんが、実はポップスがとても熱いんです!イタリア音楽の現在のトレンドはズバリ、ラップとダンスミュージック!若いアーティストが次々と誕生しパンデミックの落ち込んだ気分を晴らすように、強くてノリの良い音楽が支持されている印象があります。
また様々な文化が混ざり合ったヨーロッパ・イタリアならではの文化や言葉の融合も幅広くみられ、イタリア語と英語を織り交ぜたラップをかっこよく歌い上げるアーティストや、人気アーティスト同士のコラボ楽曲などもイタリアの音楽シーンを盛り上げる要因となっているようです。
2022年のRadio Italia Liveに出演した、イタリアで今熱いアーティスト8組をご紹介していきます。
PINGUINI TATTICI NUCLEARI / ピングイニ・タッティチ・ヌークレアーリ
まだ明るい夜8時から始まったRadio Italia Liveの幕上げを飾った、6人組インディ・ポップグループのピングイニ・タッティチ・ヌークレアーリ。
少し覚えにくいバンド名の彼らは、2010年にイタリア北部の街、ベルガモで結成された、男性バンドグループです。バンドが初めて大きな注目を集めたのは、2020年に行われたサンレモ音楽祭で3位を獲得する結果となった「Ringo Starr(リンゴ スター)」というノリの良い楽曲。“今夜はただ踊りたいんだ!”というサビが印象的なこの曲は、ビートルズのメンバーの一人であるリンゴ・スターへのオマージュ作品と言われており、キャッチーなリズムがイタリアの様々な層から支持され人気曲になりました。
またライブで1曲目に披露された「Scrivile Scemo(スクリビレ シェーモ)」が含まれるアルバム、『Ahia!』は2021年の年間アルバムランキングで8位にランクインするほどの人気を集めており、この夏も見逃せないアーティストグループのひと組です。筆者はベルガモ在住にもかかわらずライブで聴くまでは知らなかったのですが、親しみやすい曲調の楽曲が気に入ったのでこれから応援していこうと思います!
ULTIMO / ウルティモ
4番目に登場したのは、中世的な顔立ちが特徴的なローマ出身の若手アーティスト、ウルティモ。ピアスにタトゥーが印象的な見た目で繊細なピアノに歌声をのせる、そのギャップに魅了されるファンも多いようです。
幼い頃から音楽やピアノを習ってきたウルティモはのちにプロを目指し、音楽オーディション番組「Xファクター」などに挑戦するも不合格してしまいます。そんな彼がやっとプロ活動を始められたのは、2016年に行われた音楽コンペティション「One Shot Game」での優勝とレコード会社からのプロデュースを手にしてからでした。
ライブ2曲目にピアノの弾き語りで披露された「Pianeti(ピアネーティ)」が収録された、2017年10月に発売したファーストアルバム『Pianeti』は、プラチナ認定を受ける大ヒットとなりました。また世界的人気アーティスト、エド・シーランが様々なアーティストとコラボしている「2step」の、ウルティモとの最新コラボ「2step – Ed Sheeran ft. Ultimo」が5月6日に配信されたばかりです。
1曲目に披露された「Buongiorno Vita(ボンジョルノ・ビータ)」、3曲目の「Piccola Stella(ピッコラ ステッラ)」を含めるウルティモの楽曲の最大の特徴は、囁くような優しい歌声で始まりサビに向かって力強い歌い方に盛り上がっていく点です。どんどん成長していく若手アーティストに目が離せません!
GHALI / ガリ
次に紹介するのは、ファッション雑誌『GQ』とグッチが共同制作する短編フィルム“The Performers”でも取り上げられた、チュニジアにルーツを持つイタリア人ラッパー、ガリです。
若くしてイタリアのラップ会を牽引する存在のガリは、長い手足にドレッド風のヘアスタイルでライブ6番目に登場しました。2016年にSpotify限定配信したデビューシングル「Ninna Nanna(ニンナ ナンナ)」は、配信初日に最も聴かれた曲イタリア歴代1位と、デビュー作にして売り上げ20万枚を記録したイタリアシングルチャート1位という驚異的な記録を打ち立てました。その人気から、イタリアの人気歌手やエド・シーラン、トラヴィス・スコットなどともコラボ曲をリリースしています。
またライブ当日が29歳の誕生日だったガリはステージ上で、「みんなにひとつお願いがあるんだ。ここでみんなで写真を撮ってもいい!?」と携帯を取り出し撮影を楽しむ場面もみせ、ファンたちを喜ばせました。
1曲目に披露した「Habibi(ハビビ)」はチャート最高7位を、3曲目の「Good Times」は最高1位を記録しているイタリアを代表する人気曲で、テレビやラジオ、バルなどイタリア中いろんなところでよく耳にする曲です。人気が止まることを知らないガリの世界的な活躍に今後も注目です。
ELODIE / エロディ
今回のライブでは参加の少なかった女性アーティストの中で、一際目立ったローマ出身のセクシーなアーティスト、エロディ。長い髪にレザーのロングブーツで登場したとてもかっこいい彼女は、音楽活動を始める前はモデルをやっていたそうです。
2015年にイタリア版タレントショーである「Amici di Maria De Filippi(アミーチ ディ マリア フィリッピ、以下『Amici』と記載)」で2位を獲得したことがきっかけで人気に火がつき、2017年に行われたサンレモ音楽祭で人気が大爆発しました。
エロディの楽曲はセクシーでどこかエキゾチックなものが多く、5月9日にリリースされた最新シングル「Bagno a Mezzanotte(バニョ ア メッザノッテ)」が3曲目に披露されたときの会場は大盛り上がり。サビの“UNO, DUE, TRE, ALZA!(1、2、3、上げて!)”という部分ではみんなで大合唱でした。エロディの曲を聴きながら、夏に向けた準備を始めるのもいいかもしれませんね!
RKOMI / ルコミ
ライブ9番目に登場したのは、2021年の年間アルバムチャート堂々の1位を記録したアルバム『Taxi Driver』が記憶に新しいミラノ生まれのラッパー、ルコミ。28歳のアーティストの彼は、21歳までバリスタや皿洗いとして働いていた過去の持ち主です。
2012年ごろから音楽活動を始めたルコミが、14曲を収録した初のアルバム『Io in terra(イオ イン テーラ)』をリリースしたのは2017年、アルバムランキング1位を獲得しゴールド認定を受けました。活躍の幅は音楽だけにとどまらず、2019年にはファストファッションブランド、Bershkaとのカプセルコレクション発売と同時に、ミラノのBershka店舗でのライブも行いました。
その後も活躍がとまらないルコミですが、様々なアーティストとのコラボ曲も多くリリースしています。アルバム『Taxi Driver』に収録されている「La coda del diavolo(ラ コーダ デル ディアボロ)」はステージひとつ前に登場したエロディとのコラボ曲で、2022年シングルチャートで最高1位を記録した大ヒット曲をステージでも2人で披露しました。サビ途中に出てくる“パッパラ ララララ”というフレーズをルコミの特徴的な派手な声に合わせて口ずさみながら、この夏踊りたい楽曲です。
IRAMA / イラマ
日の落ちたドゥオモ広場を歓声で包んだのは、11番目に登場した26歳のアーティスト、イラマです。ラッパーでありながら誰にでも親しみやすい音楽を作り続けるイラマは、以前より筆者のお気に入りアーティストの一人です。
イラマも他のアーティスト同様、サンレモや『Amici』などの音楽番組に出演しながら活躍する歌手の一人ですが、音楽チャートなどを発表するイタリア音楽産業協会、通称FIMIによると、現時点(2022年5月)で33のプラチナ認定、5のゴールド認定に加え、約230万枚を売り上げた記録を持つ大人気歌手なのです。
そんな波に乗っている彼が1曲目に披露したのは、ステージひとつ前にパフォーマンスをしたルコミがフューチャリングした3月リリースの「5 Gocce(ゴッチェ)」。常にチャート上位にランクインする2人の共演ステージに、筆者も会場も大盛り上がりでした。アップテンポからバラードまで網羅するイラマを聴きながら、みなさまも日々生活してみてはいかがでしょうか。
SANGIOVANNI / サンジョバンニ
ライブも終盤に差し掛かったところで登場したのは、若干19歳(!)のアーティスト、サンジョバンニ。彼は2020年に行われた『Amici』の歌手部門で最終2位にランクインし、注目を集め始めました。
まだプロアーティストとしての活動を始めたばかりのサンジョバンニですが、2021年5月にリリースしたシングル「Malubù(マリブ)」は、すぐに週間シングルランキングで1位を記録したほか、2021年の年間シングルチャートでも1位を叩き出し、さらにSpotify、Apple Music共にイタリア国内で最も聴かれた曲 としても名を刻みました。
“君が欲しいなら、マリブを全部買ってやるよ!”と歌う少しだるそうな歌い方や、“ジェンダーや価値観にとらわれない表現の自由(インタビューを日本語意訳)”のため、期待ピンクや塗りたいマニキュアで自然体を表現しているサンジョバンニの魅力にハマっているイタリア人が続出しています。
ライブでも会場と一体となって「Malibù」を熱唱したサンジョバンニの指先には、ワイシャツと合わせた白いマニキュアが塗られていました。新しい世代を牽引する若手アーティスト、サンジョバンニの成長からも目が離せません!
BLANCO / ブランコ
ライブのトリに残されたのは“彼”だ… ということに気づいた観客たちの盛大なコールの中登場したのは、人気大爆発中の歌手、ブランコ。鍛えられた身体と胸元の大胆な天使のタトゥーで特に若い女の子たちを虜にしている彼は、ブレシア出身の19歳(また!)。
イタリアンポップスとヒップホップの影響を受けて育ったブランコは、2020年6月にスウェーデンの音楽共有サービス「SoundCloud」に投稿した「Quarantine Paranoid EP」が多国籍音楽会社であるユニバーサル・ミュージック・グループの目に留まり契約したことで、プロのアーティストへの扉を開きました。
サンジョバンニの人気もさることながら、ブランコも負けてはいません!コンサートのチケットが即完売するほどの人気を博しているブランコですが、2020年6月にデビュー曲「Belladonna(Adieu)(ベッラドンナ アデュー)」、7月に「Notti in Bianco(ノッティ イン ビアンコ)」と立て続けにリリースされた楽曲はたちまち人気になり、翌年2021年9月に出した初アルバム『Blu celeste(ブルー チェレステ)』を発表した週間アルバムチャートですぐさま1位を獲得、同週シングルチャートではなんと10位から1位までを独占したのです。
ライブでは1曲目に少し激しめな「Fin che non mi seppelliscono(フィン ケ ノン ミ セッぺッリスコノ)」で会場を盛り上げてから、2曲目の「Blu Celeste」でピアノの上に立ちゆったりとバラードを聴かせ、最後に代表曲である「Notti in Bianco」で大合唱をし、熱気に満ちたパフォーマンスを見せました。
あまり知られていないイタリアのポップスを注目のアーティストを8組ご紹介しました。クラシックやオペラなどのイメージが強いかもしれませんが、イタリアのポップスも英語のポップスと肩を並べるほどの勢いがあり、これから夏に向けてテレビやラジオ、お店、バル、クラブやライブなあど至る所で耳にする機会があると思います。歌詞がわからなくても、踊っていて楽しい!明るい気分になる!ような曲がたくさんあるので、ぜひ聴いてみてください。そして来年以降5月〜6月にイタリアにお越しの際には、ぜひドゥオモ広場での生音楽祭を体験していただきたいと思います。(筆者もいつか行ってみたいです!)
〈参考サイト〉
https://www.radioitalia.it/ 『Radio Italia』
https://www.fimi.it/#/ 『イタリア音楽産業協会(FIMI)』 https://tg24.sky.it/spettacolo/musica/2022/05/21/radio-italia-live-2022-scaletta 『Radio Italia Live 2022: cantanti, canzoni e scaletta del concerto』 https://tg24.sky.it/spettacolo/musica/2022/05/22/radio-italia-live-2022-foto 『Radio Italia Live 2022, in 20 mila al Duomo di Milano. Le foto』